店名、社名を付ける流儀

創業

創業される人を見ていて気付くことがあります。それは事業所名に自分の好きな語句をそのまま使ってしまうことでです。 近年ではネコブームにあやかってか、事業所名に「ねこ」と付ける事業所が増えている感じがします。
創業とは自分の人生の一幕だから好きな名前にして何が悪い!と開き直られそうです。でも、ちょっと待ってください。その名前でほんとうに良いとお考えですか?

記憶に残らない情報は行動につながらない

朝起きてから夜寝るまで氾濫する情報に囲まれて暮らす私たちの脳の記憶容量には限界があります。しかも人は記憶に残らない名前は次の行動に結びつけることはできません。よく行くカフェの名前が思い出せない、何という店だったかな?など思い出せなくて落ち着かないことがありますね。新規顧客を獲得しようと思えば、名前が覚えられないと選択肢にすら上がりません。

かつてテレビCMで商品名の連呼が行われていたのは名前をすり込むことが目的でした。高度経済成長期はつくれば売れる、店を出店すれば繁盛する状況でした。
人はなじみのブランドを記憶して手にする、購入する、リピートする傾向があるとされていたので、覚えてもらうことにお金をかける意義はありました。 でもいまはどうでしょうか?

なぜ?の動機が問われる

ところがいまは動機が問われるようになっています。売り手は、なぜそれをつくっている(売っている)?、買い手は、なぜそれを欲しいと思う(購入する)?のなぜを伝える(納得する)ことが必要とされています。だから理念や世界観の継続的な発信とその約束を守ることが求められています。

時間に追われる暮らし

家庭での調理時間は年々減少しているといわれるように、時間に追われる毎日の暮らし。裏返せば、次に何をするか一瞬のうちに意思決定を行う日々の私たち。
サービスの提供側としては認知して判断して行動に至るまでのループを短く簡素化しないと選ばれても行動してくれません。一瞬で伝わらないと行動(問い合わせ、行動、リピート)に結びつかないということです。

覚えやすいだけでなく検索性も考える

いくら覚えやすいからといって、どこにでもある単語をそのまま持ってきても一般名詞として埋没してしまいます。

例えば、 「ねこ」という事業所名を付けたとします。でもこれでは何の事業をしているのかわかりません。善し悪しは別にして何を売りにしているかわかる名称は必要でしょう。「ねこコーヒー店」(ねこカフェと間違いそうだけど)、「ねこ雑貨店」(ねこの雑貨を売っているのか、人間の雑貨を売っているのかわからないけど)。

以上の傾向から事業を始めるに当たってのモノサシを考えてみました。

覚えにくいスタイリッシュな名前を避ける
「パティシエ アラ・ノルリエーリュ」(こんなフランス語はないでしょうが、雰囲気として例示しました)

友だちとの会話でどう説明しますか?
「このクッキーおいしいね、どこの店の?」「それはパティシエなんじゃら」。口コミしてもらえそうでしょうか?

どこにでもありふれた名称や一般名詞のような固有名詞(あくまで例示です)
「店舗デザイン設計室」「車検屋」「まちのパン屋」「総合企画」「虹と風」などの事業所名はどうでしょう。一般名詞ならインターネットでの検索で埋没してしまうし、抽象的な事業所名は覚えてもらえないでしょう。
例外は全国チェーンで、イメージ(看板、チラシ、店舗数など)の露出量で覚えさせるので、老若男女が言いやすい名前が良いのです。「コスモスで入浴剤買ってきてね」「青山でネクタイが特価だよ」でわかりますね(前者は「 ディスカウントドラッグコスモス 」、後者は「洋服の青山」というのが店名で仮に店を知らなくても何を売っているかわかるようになっています)。小さな事業所が一般名刺のような名称を付けても埋没しがち。ナビやWeb検索も想定して事業所名を考えましょう。

まとめると以下のとおり。

  • 事業所名に業種が連想できる言葉を付記する。 何を売りにしているかが一目でわかる冠、接頭語・接尾語などを付ける 。
  • 覚えやすい名称が望ましいが、一般的な名称との区別が難しい事業所名はインターネット検索も含めてさまざまな場面で不利。
  • 世界観が感じられる名称だと共感が得られる場合がある。万人受けをねらわず感性面を訴求する場合は尖ったネーミングもあり得る。
  • 英語やローマ字、カタカナの表記もあるが、読めるかどうか。読めないと記憶に残らない可能性あり。特に英語表記以外は気を付けよう。
  • ロゴや事業所名をデザインしたときの収まりの良さを考えよう。独自ドメインでの表現や取得しやすさも視野に入れて。
  • 地域で同じ業種がある場合、類似の名称も避けた方が無難。例えば、「あおぞらベーカリー」があって「ベーカリー青い空」などと付けると名称は異なっていてもお客様が混乱する。

良い名称を積極的に訴求するためには世界観が伝わる名称が良いでしょう。いくつか例を挙げると、

雨と休日…「おだやかな音楽を集める」というコンセプトで独自にセレクトした音楽を紹介して販売する音楽ソフト店

むろと廃校水族館…室戸市で廃校跡を活用してできた地元の魚だけを集めた話題の水族館

事業所名は大切です。迷ったら徳島県内の人は無料で相談できる日を設けていますので、お問い合わせフォームからどうぞ。