デルタ株の出現で感染対策の強化がただちに必要
新型コロナウイルス感染症で感染の脅威が増したとされるデルタ株(SARS-CoV-2 Delta variant)に対して企業や商店は対策の強化を迫られています。CDC(アメリカ疾病管理センター)によれば、ワクチン接種者でも感染することが報告されています。いずれにしてもワクチン接種後も感染対策を強化すべきというのが専門家の共通の見解です。
3つの感染経路の感染対策(おさらい)
感染経路は、①接触感染、②飛沫感染、③空気感染です。
①接触感染
人と人が接触せず、ドアノブや机、ボールペン、キーボードなど間接的に接触する可能性も含めて高濃度アルコールでの減菌で対策は可能です。これについては従来のようにやっていけばよいでしょう。現金決済を避けること、現金やカード決済で物理的にやりとりする場合は手袋装着か、アルコールによる減菌が不可欠です。宿泊施設では寝具や調度品の減菌対策も必要となります。
②飛沫感染
面談の際に飛沫が飛び交うとされる2メートルという距離を離す、もしくはアクリル遮蔽板(地面からの高さ1.4メートル程度が適切)の設置が基本です。大前提として不織布のマスクを隙間なく装着することで防げるはずです。
③空気感染
長い時間に渡って同じ空間に滞在する場合、マスクの隙間から漏れた息などにウイルスが含まれる可能性から感染が広がります。マスクをはずす飲食店では特に問題となります。また、歯科医院等では患者に加えて医師や衛生士などもリスクが高まります。
これについては換気が最善で、補完手段として空気清浄機があります。再度基本のみのおさらいです。
- 換気扇や網戸の設置による自然状態では空気の入れ替えが遅くなるので、効果的な換気のためには外気の導入と排気を同時に行う機械換気(第一種換気)が基本です。その際に冷暖房の効果が落ちるので全熱交換器(三菱ロスナイなど)の導入がおすすめです。
- 全熱交換器は24時間運用可能です。その際もエアコンほどの電気代はかかりません。
- 全熱交換器による換気では、部屋の最大収容人数を想定し、それに30立米を乗じた値を1時間で換気することを目標とします。 例/スタッフも含めて最大収容人数15人のカフェの場合 15(人)×30(m2)=450(m2)→ この場合は250m2程度の能力の全熱交換器を2台導入することになるでしょう。
- 全熱交換器の設置場所については現場で空気の流れと人の配置を見ながら決定する必要があります。また、ダクトの風圧を揃える必要があるなど空調経験の豊富な工務店、工事会社に依頼する必要があります。
- 空気感染の基本は換気ですが、ボックス席や部屋の隅で空気が淀みがちなところにHEPAフィルターを備えた空気清浄機を設置します(高価なものやイオン放出機能は不要です)。つまり換気を補完するための使用であって空気清浄機のみに頼るのは危険です。ただし油煙の多い飲食店などでは数年交換不要と喧伝されるHEPAフィルターも数ヶ月持たない可能性があります。業務用途では大した費用ではありませんので半年程度での交換を奨めます。
参考「冬場における換気の悪い密閉空間を改善するための換気の方法」(厚生労働省)
全熱交換器については以下の記事もご参考に
「飲食店での感染リスクを減らすための換気の重要性~全熱交換器のおすすめ~」
空気感染対策の「見える化」のためにCo2センサーを導入
感染対策を行っている表示(ステッカー)を掲げていても換気に関しては事業所を信用するしかありません。そこで実際に換気が行われているかどうかを可視化するためにCo2センサーを設置します。このことにより事業所内でも換気が行いやすくなります。例えば会社の営業所で外から営業が戻ってきてエアコンに浸っているときに窓を開けると機嫌が悪くなることがあるでしょう。そんな際に数値が危険な状態なので開けます、というと文句は出ないはずです。また、店舗ではお客様に二酸化炭素濃度を表示することで換気の度合いが「見える化」して安心感につながります。その際に「CO2センサーで換気の状態を表示しています。目安となる1000ppmを下回っていることをご確認ください」などと表示するとお客様も安心されるでしょう。機器そのものは補助金をあてにするほどのものではなく、設置も簡単でただちに導入できるものです。ここ数ヶ月は品切れで入手が困難となっていましたが、現時点(2021年8月)では入手が容易となっているので確保されることをおすすめします。CO2センサーの導入に関して以下の留意点があります。
(1)めざす数値とその意味について
ビル管理法で求められるのは二酸化炭素濃度が1000ppm未満です。この濃度であれば換気が不十分とはいえないということです。この基準を満たすために人間の頭数から算出すると、1人1時間30立米の換気を行うとされています。ただしこの濃度を下回れば感染しないという保証はありません。値は低ければ低いほど良好です。参考までに外気のCo2濃度が400~450ppm程度ですからこれを下回ることはありません(気象庁によれば、2019年の世界の平均濃度は前年と比べて2.6ppm増えて410.5ppmとのこと)。測定誤差、デルタ株の感染力などを勘案すると700ppm未満での運用が望ましいと個人的には考えます(同様の見解の専門家もいらっしゃるようです)。その場合は1人1時間40~45立米の換気をめざすことになります。
(2)測定精度について
二酸化炭素濃度を検知するためにはセンサーが必要ですが、少なくともNDIR(Non Dispersive InfraRed=非分散型赤外線)方式のCO2センサーを備えていることが前提です。価格の目安はおおむね1万円以上ですが、1万円未満の製品も見受けられます。NDIR方式でもセンサーの精度が異なり、2波長式のほうがさらに正確といわれています。
(3)使用目的、用途との適合性で機種を選定
①モバイルで移動する場合 少人数でのオフィスや作業所に設置する場合
モバイルで持ち出して計測(移動オフィスや混雑した空間、飲食店などで実測)するときには小型軽量であることでしょう。この機種はシンプルなつくりですが、アメリカで設計されて2015年頃から販売されている先駆的な機種です。小型ながら2波長式となっていること、充電池は内蔵しないことで温度特性の安定に貢献するなど合理的な設計で経年変化にも強いと推察されます。電源はUSB給電によりPCなどから取ります。作動電圧に留意する必要はありますがモバイルバッテリーからも可能です。また、変換アダプターを付ければACからの給電が安定感があるでしょう。非公式な情報では通信でログを取りだすこともできるようです。比較的廉価ながら世界的なベストセラーとなっています。ただし表示がモノクロ液晶で大きくないので離れたところから視覚的にわかりやすく伝えたい飲食店などのモニター用には不向きです。
②表示機能と一体型で見やすく校正機能も付いている万能型
あらゆる場面で使えそうなのがカラーで表示されて視覚的にも訴求するデザインの機種。このモデルもCO2センサーはNDIR方式です。またアプリ連携で離れた場所からでもCO2濃度を数値やグラフとして読み取ることもできます。CO2センサーは折に触れて表示値の校正をかける必要がありますが、この機種には自動および手動の校正機能があり、そのしくみはよく考えられています。手動の校正とはおそらく外へ持ち出して操作することで外気のCO2濃度を基準としてリセットされるものと思われます。充電式で電源はアダプタとバッテリーの両対応。
CO2センサーはNDIRの2波長型が内蔵されていて精度については安心。卓上用ですが壁掛けが可能でデザインは落ち着いているので事務所や診療所などに適しています。電源は、DC5V USBケーブル仕様(Mini USB側面接続 ACアダプター付属)。充電機能はないので家庭用電源で給電することになり、移動させずに設置する用途向きです。
③別のディスプレイで大きく表示したい 飲食店や規模の大きなオフィス向け
ラトックシステム Wi-Fi 環境センサー RS-WFEVS1A
無線LANでの接続が前提となり、本体に数値の表示機能はないのですが、ディスプレイやタブレットなどで表示することで大きな画面で見ることができる多機能型です。センサーはPA方式といってこれも優れた方式です。またPM2.5なども計測できるようです。繰り返しますが単体では使えませんので画面表示機能のある端末とWi-Fiで接続して使用します。