「おだやかな経営」のWebサイトを立ち上げた理由
身近で見てきた経営者の苦悩
中小企業・小規模事業者の経営をずっと見てきました。多額の借入を抱えて元本返済と金利を払うために働いているような経営者一家もいらっしゃれば、相談できない悩みを抱えてひとりで情報収集をしている方もいらっしゃるでしょう。経営者との面談はドラマのシナリオを見ているかのようです。経営については(テーマにもよりますが)家族や友人にすら相談できないことがあるかもしれません。
判断するモノサシが必要
自力で考えて解決できる着眼点を提供しようと考えました。世の中には相談するのが大好きな経営者がいて、「青がいいか赤がいいか」「Aプロジェクトから始めるかBからがいいか」など細かく相談したい方もいらっしゃいます。
人生も経営も一瞬一瞬の意思決定の積み重ねです。そして経営判断には重大なことととそうでないことがあります。それを経営者自身が見極めていただかないと生産性は上がらないし経営も愉しくないでしょう。
やること、やらないことの判断基準(モノサシ)を持たなければ、不要なところに経営資源(ヒト、モノ、カネ、ノウハウ+時間、+ネットワーク)を投入して財務を悪化させたり、必要なところに経営資源を投下できずに機会損失を招き、そこから坂を転落する場合もあります。そうでなくても取引先から見て便利屋のような会社になって従業員の献身的な努力で支えられる低収益体質に陥ってしまうでしょう。
自分でモノサシを持って判断することは生産性を上げる第一歩でもあります。「おだやかな経営」では、答を見つけるよりも適切な課題の設定を行うことが本筋と訴え続けていきます。
誰に相談すればよいか?
そうはいっても自力で解決できないこと、決断しているが後押しして欲しいことはあるでしょう。公的な経営相談には限界があるので、お金を払ってでも信頼できる相手に相談されることをおすすめします。
しかし誰に頼めば良いかがわかりません。医師なら患者の口コミで名医との評判が伝わるでしょうが、守秘義務を伴う経営相談では納得したとしても口コミされることはありません。
目に見えないソフトこそ強み
また、選ぶ側も提供する側も判断材料がないなかで、無形のソフトの対価の判断材料をお出しするというアピール/自己防衛というのもあります(お役に立てるかどうかの自戒を込めています)。
経営力とはハードや仕様ではなく、目に見えないソフトであること、それが利益の源泉になっていることを理解されている方には当たり前のことです。
あの人に聞いてみようはいいけれど…
これまでに接触のあった事業所様やセミナーや講演会にご参加いただいた方などから気軽にお電話やメールで問い合わせをいただく毎日です。知り合いだからちょっと聞いてみようというお気持ちは理解できますし、こちらもなるべくお役に立ちたいと考えています。
しかし誠実にお応えようとすれば時間をいただくこともあります。それに私はひとりしかいません。5分で対応できても次々とご質問が寄せられると…(ひとりと大勢)。
例え一瞬で答えられたとしてもそれこそがお金になるノウハウです。集中している意識が殺がれることが最大のマイナスかもしれません。それは誰かにとっての損失になるでしょう。
大企業はトップが変わらないと
「おだやかな経営」は中小企業・小規模事業者にとっての価値を提案するとしていますが、もしかしたら大企業にとっても参考となる(むしろ大企業こそ必要では)と考えます。
バブル崩壊の頃、経営資源の量(規模)で世界を席巻した日本の企業(自動車、社会インフラ、エネルギー、金融、通信などの大手)が後退して、IT活用でビジネスモデルを構築したプラットフォーマーが牛耳る事態となっています。日本を代表するものづくり企業のサラリーマン化/外注化/マーケティングの名の下での横並び化がこの事態を招いています。そのために組織の動かし方や意志決定、コミュニケーションデザインといった機能面の調整や多様性を尊重する風土が求められています。
ただし組織論やコミュニケーション論といった部分的な最適化だけでなく、経営者が未来を見据えて「あるべき姿」を捉え切れていないのが要因ではないでしょうか。
現場では成果を出して保身を考える「上の方針」に応えつつ(応えるように見せかけて)会社の将来や顧客のことを思って現場で工夫や調整を行っているかもしれません。わかりやすく言えば「上の方針」によって現場が混乱し従業員満足度、顧客満足度とも低下して成果が遠のくことに気付かない裸の王様といったところでしょうか(組織の志気が落ちていく大企業や団体を目の当たりに見ています)。
自力で生きていく心意気、覚悟
政治にも言いたいことがたくさんあります。人口減少で市場が縮小、実質所得が減少するなかで物価が上がり、若い世代の生活苦、自殺者増加、無関心社会と表面的なつながりを求める社会で将来の不安を拭うことができません。安心して生きていける社会があってこその経営や起業であり消費ではないかと思うのです(ベーシックインカムの導入を考える時期ではないでしょうか?)。
こんな時代に生きていく私たち、経営していく事業所として、過去の成功パターンをなぞるのではなく、そしてやがて枯渇するだろう公的な補助金に依存せず、時代や人間の本質を見て(潜在的なニーズや社会の底流の感情に思いをはせつつ)持続的な経営を行うことが必要と説いています。
「おだやかな経営」の実践に向けて
長く安定した経営を行うための考え方を「おだやかな経営」のコンテンツとして体系化して提案することで、地域社会のお役に立てればと考えたのが動機です。無形のソフトこそ経営の根幹であり、それには対価が伴うこともお伝えしたいことです。
20年ほど前に立ち上げたhttp://www.soratoumi.com/の内容が陳腐化していること、レスポンシブなWebデザインになっていないことなどからスマートフォンでも閲覧しやすいWordPressを活用した文字中心のコンテンツとしています。まとめサイトなどアフィリエイトサイトと混同されないよう簡素なインターフェイス、軽いつくりこみ、無意味な画像の排除を心がけました。
文章を書きながら実は個々の経営者、あの人この人に思いを馳せているつもりです。Webコンテンツという体裁を借りて分身の術のごとく語り掛けています。
「おだやかな経営」という考え方を経営で実践していただくことで幸福な生き方に近づいていただけたらの願いを込めて。
平井 吉信